彼岸過迄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年1月22日発売)
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本棚登録 : 1833
感想 : 136
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1912年 朝日新聞連載 後期三部作

個々の短編を重ねた末、その個々の短編が相合して一長編を構成するという試みー プロローグで漱石が語る。

主人公は、卒業後求職中の青年・田川。
彼に関わる、あるいは、聴いた、物語。
冒険談・サスペンス・友人の恋愛談・生い立ち 等、語部を替えながら、其々短編として独立する。

前期三作に比べれば、ストーリー豊かで、読み物として面白い。

「雨の降る日」は、雨の降る日、幼女を突然亡くした一家を描く。突然の悲しみを、淡々ととやり過ごすような家族の描写が、痛ましい。感情表現はされず、「雨の降る日に紹介状を持って会いにくる男が嫌になった。」とだけ主人に語らせる。
漱石が、この頃、娘を亡くしたことを反映しているとのこと。

結末という章で、主人公・田川を、世間を聴く一種の探訪者である、としている。ストーリーの主人公は、友人・須永である事が多い。
ストーリーは、主人公によっては動かないという状況は、読者を田川目線にする事ができたのではと思うのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年2月25日
読了日 : 2022年2月25日
本棚登録日 : 2022年2月25日

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