短編集というより、随筆とかエッセイに近いと思いながら読むと、これらは、小品というジャンルとの事。短編と随筆との中間の曖昧な領域だそう。
作品としては、7編だが、その中にもわかれた項目がある。ほぼ、専属作家として、朝日新聞系に掲載された作品群。
まだ、未読の漱石の作品が多いけれど、私は長編の小説よりも好きかもしれない。
「文鳥」
文鳥を飼い始めた主人公(ほぼ漱石)の、観察日記風。文鳥の佇まいが、絵画のように表現されている。目の前に、真っ白な文鳥が現れてきます。
それにからめて、一人の女性の記憶を、ちょっと寂しげに思い出したりします。
「夢十夜」
十夜の幻想的な夢物語。
時代設定も、登場人物も様々。
2回しか行ったことないけど、歌舞伎の場面転換のようで、世界観に直ぐに引き込まれる。
それぞれ、趣きがあり、示唆的な内容だと思う。
第一話は、百年後に会いに来るのを 百合 の花で表している。おしゃれでびっくり。
「思い出すことなど」
“修善寺の大患”の後の、死の直面から徐々に回復していく闘病記風。そんな状態でも、客観的に自分や周囲を飄々と語っている。
どの作品も、読むたびに新しい印象を持てると思う。形式は、小品でも、これだけ集積されれば、大作ですね。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新潮文庫
- 感想投稿日 : 2022年2月9日
- 読了日 : 2020年12月9日
- 本棚登録日 : 2022年2月6日
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