晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2014年6月27日発売)
3.88
  • (167)
  • (242)
  • (169)
  • (29)
  • (4)
本棚登録 : 2546
感想 : 208
4

だいぶ前になるけれど、当時の職場のそれなりの年齢の女性たちの(しかも離婚率やや高め)ランチタイムの時、人生いつからやり直したいかという話題になり、「卵から」と答えて爆笑されたことがある。ウケを狙った訳でなく、本気だったんですけどね。読んでいて、そんな懐かしい事を思い出しました。
主人公は三人。一人目は、母親が長男を溺愛するあまり、家族が崩れていった次男の由人。二人目は、海辺の貧困家庭に生まれ、絵の才能を持て余しながら、絵画教室の教師の子供を18歳で出産し、育児放棄して家出した野々花。三人目は、長女を乳児で突然亡くた母親から異常な愛情と管理を受ける女子高生正子。
東京という都会に飲み込まれながら三人は格闘してきた。彼らは限界を感じ都会の迷子になる。そして、入江に迷い込んだクジラに会いに行く。
格別不幸そうな三人でありながら、自分に友人に近しい誰かに重なってくる。その誰かのどこかに感情移入しながら読ませてくれる。
入る事は容易でも、抜け出す事は難しい。
迷ったクジラを助けようとする人がいるように、彼らの出口も見えてくる。
いろんな事を思い出して、残像が残る様な作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年10月24日
読了日 : 2022年10月24日
本棚登録日 : 2022年10月24日

みんなの感想をみる

コメント 5件

土瓶さんのコメント
2022/10/24

おびのりさん、こんばんは~^^

この「人生をやり直すなら、いつからか」という問いを聞くといつも思うことがあります。

今がそうでないと、なぜ言い切れるのか、と。
実は今の人生はやり直しているものかもしれない。ただ、その記憶がないだけで。
2回目なのか、3回目なのか、もしかしたら数千回目なのか。
記憶がなければわからないわけです。
そうして何度繰り返しても、まったく寸分狂わぬ人生を送ってしまい、こう言うのです。
「人生をやり直すなら、いつからか」と。

よくあるホラーですね(*^▽^*)
でも、ほんとうにそうだとしたら……:;(∩´﹏`∩);:イヤー!

おびのりさんのコメント
2022/10/24

そんな事もあるかもねえ。
人って、多少の心がけぐらいでは、能力ってそんなには、変わらないなあ。って。
学校では、教えてくれないでしょう。頑張ってもダメな時がある事。同じ頑張るなら、良い遺伝子でやりたいなあと思うのですよ。
異世界へは、転生したくないです。

ひまわりめろんさんのコメント
2022/10/25

たまごからだと遺伝子の半分は既に決まってる気がするとかいう科学的ツッコみは今いらないですか?そうですか

土瓶さんはほんとは胡蝶なのだよとかいう文学的ツッコみもいらない?あそう
荘子は別に文学的じゃないか

おびのりさんのコメント
2022/10/25

もちろん、違う卵でお願いしたい。

土瓶さんのコメント
2022/10/25

壺中の胡蝶という、舌を噛みそうな二重構造でお願いします(笑)

ツイートする