フェルマーの最終定理を巡る数字者達の冒険小説。そして、数学のドラマティックな歴史物語。
サイモン・シンのプロローグから、読み始める勇気をいただく。
専門的な数学を細かに説明せず、業績の偉大さに焦点を当てようとする。(細くなくてもわからないけどね!)
始まりは、紀元前6世紀。既に神格化されるピュタゴラス。「世界は美しい数でできている」という思想からの研究が数学の黄金期を作る。ピュタゴラス教団の教祖として活躍するが、彼に反する者は抹消される。多くの弟子と共に戦死し、迫害が続く。それが、数学を広めることとなる。
紀元前3世紀、エウクレイデスが、幾何学的知識の集大成 「原論」を。ディオフォントスが、数論的知識を「算術」に編纂する。
このあたりの書物が、、幾たびかの戦闘で喪失され、暗黒時代が続く。
17世紀 フランス人裁判官のフェルマーが、アマチュア数学者として、その才能を発揮。意地悪な天才で秘密主義。論文にも興味無し。「算術」を好み、愛読する。その中でピタゴラスの定理を知り、その上級パターンとしてフェルマーの定理を思いつく。
「驚くべき証明を見つけたが、それを書くにはこの余白は狭すぎる」とんでもないメモを残して、証明を書き記さないで亡くなる。
フェルマーの息子が、「算術」の余白に書き込まれたメモをまとめて出版する。その余白の難問に数学者達が挑む。そして、最後に残ったものが、フェルマーの最終定理となった。そして、証明できないまま300年残ることになる。
まず、18世紀オイラーという計算の天才が挑む。
19世紀ソフィジェルマンとう女性数学者が男子と偽り研究を続ける。
そして、長い間数学の僻地だったであろう日本で、
1955年 谷山=志村予想が発表される。
1984年 ゲオハルト=フライが、フェルマーと谷山志村予想の二つの理論を結合する。
そして、遂に、アンドリュー・ワイズが、10歳の時街の図書館でフェルマーの最終定理と出会い、その証明をすることを決心する。
1986年から独りで研究を始める。6年の月日をかける。過去の理論を駆使して遂に、1993.6.23ケンブリッジにてその成果を発表する。
論文化した後、修正にも苦労するも、1995年修正論文を発表して最終定理に決着をつける。
それはそれは、天才だらけ。不遇の天才も多かった。女性研究者は認められない時代も長かった。
そして、いつの時代も戦争は、文化や業績を簡単に破壊する。
一つの難問は証明されたけれど、まだまだあるみたいですよ。そして、コンピュータによる解析の是非など、数学の世界も終わりが無さそうです。
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- 感想投稿日 : 2022年4月14日
- 読了日 : 2023年3月5日
- 本棚登録日 : 2022年4月14日
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