フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2006年5月30日発売)
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フェルマーの最終定理を巡る数字者達の冒険小説。そして、数学のドラマティックな歴史物語。
サイモン・シンのプロローグから、読み始める勇気をいただく。
専門的な数学を細かに説明せず、業績の偉大さに焦点を当てようとする。(細くなくてもわからないけどね!)

始まりは、紀元前6世紀。既に神格化されるピュタゴラス。「世界は美しい数でできている」という思想からの研究が数学の黄金期を作る。ピュタゴラス教団の教祖として活躍するが、彼に反する者は抹消される。多くの弟子と共に戦死し、迫害が続く。それが、数学を広めることとなる。

紀元前3世紀、エウクレイデスが、幾何学的知識の集大成 「原論」を。ディオフォントスが、数論的知識を「算術」に編纂する。
このあたりの書物が、、幾たびかの戦闘で喪失され、暗黒時代が続く。

17世紀 フランス人裁判官のフェルマーが、アマチュア数学者として、その才能を発揮。意地悪な天才で秘密主義。論文にも興味無し。「算術」を好み、愛読する。その中でピタゴラスの定理を知り、その上級パターンとしてフェルマーの定理を思いつく。
「驚くべき証明を見つけたが、それを書くにはこの余白は狭すぎる」とんでもないメモを残して、証明を書き記さないで亡くなる。
フェルマーの息子が、「算術」の余白に書き込まれたメモをまとめて出版する。その余白の難問に数学者達が挑む。そして、最後に残ったものが、フェルマーの最終定理となった。そして、証明できないまま300年残ることになる。

まず、18世紀オイラーという計算の天才が挑む。
19世紀ソフィジェルマンとう女性数学者が男子と偽り研究を続ける。
そして、長い間数学の僻地だったであろう日本で、
1955年 谷山=志村予想が発表される。
1984年 ゲオハルト=フライが、フェルマーと谷山志村予想の二つの理論を結合する。

そして、遂に、アンドリュー・ワイズが、10歳の時街の図書館でフェルマーの最終定理と出会い、その証明をすることを決心する。
1986年から独りで研究を始める。6年の月日をかける。過去の理論を駆使して遂に、1993.6.23ケンブリッジにてその成果を発表する。
論文化した後、修正にも苦労するも、1995年修正論文を発表して最終定理に決着をつける。

それはそれは、天才だらけ。不遇の天才も多かった。女性研究者は認められない時代も長かった。
そして、いつの時代も戦争は、文化や業績を簡単に破壊する。
一つの難問は証明されたけれど、まだまだあるみたいですよ。そして、コンピュータによる解析の是非など、数学の世界も終わりが無さそうです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年4月14日
読了日 : 2023年3月5日
本棚登録日 : 2022年4月14日

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コメント 2件

shukawabestさんのコメント
2022/07/16

shukawabestです。
読み終えました、この本1回目。面白かったです。まだ、数%しか理解できてないと思いますが、クイズやなぞなぞが好きだった10歳前後の自分、高校に入って数学に全く手も足も出なくなった自分、こやつから「生きて行くための仕事」という枠組みを取っ払ったらこの本に出て来る数学者たちと同じ生活になるのだろうな、といつも想像してしまう同僚。そんなことを思い浮かべながら、それぞれの数学者たちのエピソードを楽しむことができました。ありがとうございました。

おびのりさんのコメント
2022/07/18

shukawabesutさんへ
こんばんは。お返事遅くなりました。
ちょっと、この暑さのせいかご不幸が続いてしまって。
フェルマーの最終定理は、小説以外をあまり読まない私でも、数学の美しさと深さみたいなものに感動しました。
私は数IIBでギブアップしたんですけど、こんな話を先に知っていたら、もう少し向きあえたかもと思いました。
「数学する身体」という本は日本の若手数学者の作品ですが、こちらもなかなか興味深いものがありましたよ。

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