戻り川心中: 傑作推理小説 (光文社文庫 れ 3-4)

著者 :
  • 光文社 (2006年1月1日発売)
4.05
  • (186)
  • (167)
  • (120)
  • (15)
  • (3)
本棚登録 : 1656
感想 : 180
4

各作品、花が共通項の、時代は大正から昭和初期の、連作短編集。
最近、友人にいただいて、古いものだけど、“凄絶な滅びの美学”と、当時の帯が残っていた。凄まじく、恐ろしいという美学なのです。
各作品、ミステリの構成ですが、犯人やトリックを追うものではありません。彼らが、何故その罪を背負う事になったのか、その動機を消し去る為に身を滅ぼしていく犯罪者への哀悼の物語。

「戻り川心中」
最近、坂口安吾の太宰治情死考を読んでいたので、あゝ、連城さんもそうなのか、太宰治の心中を情死とは思えていないのだろうと。
主人公の歌人岳葉は、二度の心中事件を引き起こし、その事件を題材とした傑作歌集を完成させた後、自害する。彼が遍歴した三人の女性達。彼女達への愛情も自堕落な生活も、全てが作品を完成させるトリックではなかったのかと思いを馳せる。旅館の古びた部屋の花菖蒲。その咲いた花の数から真相が浮かんでくる。

「藤の香」
家族の為、色街で働く女性達。文盲の彼女達の代筆屋。代筆屋は、その実情を知り、彼女達の重荷を背負い、一人罪を負う。

「桔梗の宿」
幼い娼婦の淡い恋心が引き起こす、殺人事件。八百屋お七の筋書きをたどる。

「桐の柩」
犯した罪から、好きな女を抱けなくなった男。自分の手下を女の元へ通わせる。男は、女の香を確かめながら手下を懐く。逆縁橋の上で少しづつ解かれる秘密。

「白蓮の寺」
田舎寺の嫡子であった少年の交錯する幼児期の記憶。母親は、最大の秘密を守る為に、その記憶をも操作しようとしていた。母親は、最期まで秘密を守り通して逝く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 
感想投稿日 : 2022年10月11日
読了日 : 2022年10月11日
本棚登録日 : 2022年10月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする