優しい父と美しい母、そして兄の泉水と弟の春は、半分しか血が繋がっていないってどういうこと…。
こんな衝撃的な事実を冒頭から突き付けられているにもかかわらず、言葉遊びのような、センスの良い会話が飛び交っている。
まず、泉水と春。二人の名前を英語にすると、どちらも『スプリング』だなんて洒落てる。
泉水の会社は「遺伝子情報」を扱う企業で、春は人並み以上の外見を持ち、絵の才能がある。
グラフィティアートの出現と、仙台の連続放火事件、遺伝子のルール。
絵画の知識や小説の書き出しなどを盛り込んで、複雑な話を読みやすく書かれているところが凄いと思った。
読みやすいということは、言葉の使い方や例え方など、作者の読者に対する気遣いが行き届いているということなのだと思う。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる」等々。
記録しておきたくなるようなたくさんの名言と、黒澤の登場は、この物語を大いに盛り上げてくれていると思う。
遺伝子を越えた最強の家族の物語に、思わず小さく万歳したくなった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
伊坂幸太郎
- 感想投稿日 : 2023年7月2日
- 読了日 : 2023年7月2日
- 本棚登録日 : 2023年7月2日
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