夢見る帝国図書館 (文春文庫) [Kindle]

著者 :
  • 文藝春秋
4.00
  • (5)
  • (11)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 133
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (407ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 登場人物が執筆した…という体の、いわゆる作中作とでも言うべき『夢見る帝国図書館』が掲載されているのも本書の楽しみの一つ。
    個人的にはメインストーリーよりも、帝国図書館がどのように誕生し、途中どのような扱いを受け、現在の形に至ったのかを大まかに読み進めることができた点が本書のハイライトだと感じている。
    全体的な印象として、帝国図書館は時代の流れに足を引っ張られ続けたようだ。国民の学力向上を最優先としない政府は、西南戦争以降の数々の戦費増大を理由に図書館への予算を削り、その結果、書庫の狭隘状態など多くの課題が生まれることとなった。

  • 近代化とは何だったのか、重層的に掘り下げて想像力豊かに織り上げた物語

    アジールとしての上野という土地の重要性が印象的

    きわこさんの半生の描き方も工夫があって魅力的だけれども、なんといっても白眉は図書館の視点で語られる時代の変遷。文人たちの図書館での姿や、上野動物園の戦争体験など、多様な語り手のまなざしを借りて時代の流れを描いていく手法が上手いと思った

  • 上野の図書館のことを書いてみない。そんな言葉から始まった喜和子さんとの交流。そして彼女が辿ってきた過去が、ちょっと不思議で悲しい図書館の歴史物語と共に語られてゆく。あらためて思う。こうして自由に読書ができることは本当に幸せなことなんだと。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 上野にある「帝国図書館」(現・国立国会図書館国際子ども図書館)の歴史を通じて、「喜和子さん」という女性の生涯を追う。

    帝国図書館や上野の歴史はとても興味深かったし、元・愛人の名誉教授や路上生活者のイケ爺、女装すると自分らしくいられるという芸大生など、喜和子さんが縁を結んだ面々が個性豊かではあるけれど作りものらしからぬ自然さで描かれていて、フィクションとは思えないようなリアルさを伴っていた。

    この作品を書き上げるのにはかなりのリサーチが必要だったと思うが、それを感じさせない軽やかでユーモラスな書きぶりはすごい。
    一方で、少し冗長に感じたというのが正直な感想ではある。
    それと、まあ実際そうなんだろうし仕方がないとは思いつつ、東京出身の作者に、田舎(本作では宮崎県)は男尊女卑が根強いところで女性は生きづらいところというふうに書かれるのは、なんだかしんどいなと思うところもある。
    自分も田舎の出身だからか、そう思ってしまう。

    個人的には動物が人間の戦争に巻き込まれて死ぬのがとてもしんどいので、戦時下で上野動物園の動物たちが殺されるシーンはどの作品で読んでもいやなものだ。
    空襲で檻が壊れると危ないとか、食料難とかいった理由からやむを得なかったと認識していたが、引用した戦意発揚の狙いがあったならなんとも憤ろしい。

  • 貴和子さんの図書館を愛する気持ちと生い立ちが切なくて…。貴和子さんの過去は帝国図書館のなかにあんだろうなぁ、と自分を納得させた。
    文豪が愛した帝国図書館、それらの話も面白くて興味深かった。

  • ライターをしながら小説家をめざさしている「わたし」。ある日、上野公園でちょっと風変わりな女性「喜和子さん」に出会います。出来たばかりの国際子ども図書館の話題から、2人は次第に交流を深めていきます。やがて語られる「喜和子」さんの生い立ち…。日本で初めての国立図書館の物語成と並行するように、「喜和子さん」の幼少期のある記憶をめぐる“謎解き”が進んでいきます。ラストは感動、感動の涙です。図書館好きな方にはぜひ。

  • あまり先が気になる感じでもなくて、合間に挟まれる図書館の歴史は興味深いと思いつつ、ページが遅々として進まなくて途中で断念、、

  • 主人公と偶然出会った女性、喜和子さんの戦後の物語の間に、帝国図書館の誕生からのエピソードが挟まれていきます。喜和子さんの生い立ちは結局正確なところはわからないままで、こうだったのかな…と思いを巡らす形で登場人物たちと読者が一体になった感じがありました。帝国図書館を愛した人たちには名だたる文豪も多くいて、それらの話やお金がない…という苦労など、図書館の物語もまたおもしろく、2つの話が互いに影響しあってより上質な物語が紡がれていました。

  • 今では自由に無料で図書館を利用して充実した日々を送れているが昔は本当に本が好きな人が利用して、そして書く道を究めていたんだな。しかも女の人の過酷な人生が絡んでいて、あっという間に読み終えた。ちょっと井戸端会議のような、でもそれが真実なのかもしれないけれど、そこの興味ない部分はサラッと読み進めたが。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島京子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×