センセイの鞄 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2004年9月3日発売)
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寒さでかじかんだ手を、両手でそっと包んで温めてくれるような本だった。カイロよりも熱燗よりも温かいその手の熱を、なんだか泣き出したくなるような気持ちで感じていた。

ひとりは、気楽で、自由で、ときどき心細い。
ひとりを愉しんでいたはずなのに、ひとりよりも居心地の良い誰かの隣を見つけてしまったら、もう前のわたしには戻れないのだと知る。それは喜びではなく絶望だ。もしその相手がいなくなってしまったら、その時わたしはどうなるのだろう。

「一度出会ったら、人は人をうしなわない」と、以前読んだ本の主人公は言っていた。すぎたことだけが、確実に自分のものであると。

目を閉じて考える。あなたはわたしの内側に確かに存在している。あなただったらどうするか、あなただったら何と言うか、日々あなたの存在が私を生かす。

あなたが隣に、いなくても。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2022年4月21日
読了日 : 2022年4月20日
本棚登録日 : 2022年3月29日

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