寒さでかじかんだ手を、両手でそっと包んで温めてくれるような本だった。カイロよりも熱燗よりも温かいその手の熱を、なんだか泣き出したくなるような気持ちで感じていた。
ひとりは、気楽で、自由で、ときどき心細い。
ひとりを愉しんでいたはずなのに、ひとりよりも居心地の良い誰かの隣を見つけてしまったら、もう前のわたしには戻れないのだと知る。それは喜びではなく絶望だ。もしその相手がいなくなってしまったら、その時わたしはどうなるのだろう。
「一度出会ったら、人は人をうしなわない」と、以前読んだ本の主人公は言っていた。すぎたことだけが、確実に自分のものであると。
目を閉じて考える。あなたはわたしの内側に確かに存在している。あなただったらどうするか、あなただったら何と言うか、日々あなたの存在が私を生かす。
あなたが隣に、いなくても。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年4月21日
- 読了日 : 2022年4月20日
- 本棚登録日 : 2022年3月29日
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