東京島 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年4月24日発売)
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本棚登録 : 7106
感想 : 971
3

無人島で31人の男に対して女1人・・性に溺れる女性の物語を想像していたが、そんな矮小な枠に収まるものではなかった。
人間同士のぶつかり合いや出し抜き、抜け駆けや、それに至る心理状態が、無人島という閉鎖的で特殊な舞台の上で繰り広げられていた。
登場人物それぞれが固有の過去を抱えていて、物語が進行するごとにそれらが少しずつ明かされていく過程も面白い。
桐野夏生さんの本は「グロテスク」以来だったが、綺麗事を一切書かないというか、人間誰しもが本来持っている本能的な黒さ(自分が生きるためなら周りを騙したり、自分本位になったり)が物語全体を覆っている。たまにはこういう黒い小説を読むのもいいなと思った。
最後の結末は、意外だった。読み始めは、まさかこんな結末になるとは全く思わなかった。だが、全くもって興醒めするような不自然さはなく、むしろ救われた気持ちになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月4日
読了日 : 2023年11月4日
本棚登録日 : 2023年11月4日

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