春の数えかた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2005年1月28日発売)
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本棚登録 : 749
感想 : 80
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動物行動学者の好奇心にあふれたエッセイ集。
身のまわりの植物や昆虫に対する、著者の眼差しのあたたかさと鋭さを両方とも感じることができます。

特に印象的だったのは「自然との共生」についての文章です。(「幻想の標語」「人里とエコトーン」)
そもそも自然とは果てしない競争と闘いの場である。
人間は住みやすい環境を守るために雑草や虫を追い払うけれど、植物や虫は子孫を残すため追い払われてもまた巻き返してくる。
そのように、人間のロジックと自然のロジックがせめぎ合うところが人里であり、その状態こそ「自然との共生」なのではないか、と著者は述べています。
そう考えると、里山の景色がなんだか違ったように見えてくるから不思議です。

また、表題作にもなっている「春の数えかた」もおもしろかったです。
生物はどのようにして春が来たことを知るのだろう?
たった5ページのエッセイとは思えない、わくわく感を味わうことができました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アニマル・ワンダー。
感想投稿日 : 2015年8月19日
読了日 : 2015年8月11日
本棚登録日 : 2015年8月19日

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コメント 2件

nejidonさんのコメント
2015/09/04

すずめさん、こんにちは♪お久しぶりです。
この本はだいぶ前に読んだのですが、大変面白く
読んだことを覚えています。
ヒントを得てブログ記事にしたものもいくつかありまして(笑)。

で、レビューとは関係ないのですが、「ちいさなつづら」というタイトルは
安房直子さんの作品からとられたのでしょうか?
変なことを聞いてすみません。
作品集の中で殊に好きな一編なのです。
すずめさんと同じだったら嬉しいなぁと。

すずめさんのコメント
2015/09/04

nejidonさん、ご無沙汰しております!
コメントありがとうございます。
日高さんのエッセイは科学者の目線とわくわく感を同時に味わえるのが魅力ですね。

「ちいさなつづら」は残念ながら安房直子さんの作品ではありません…。
HNすずめ→すずめのお宿→宝物の入ったちいさなつづら…というイメージでつけたタイトルです。
「小さなつづら」は安房直子コレクションの3巻に収録されているとのこと。(nejidonさんはこちらのコレクションをお持ちなのですね!)読んだことはないのですが、nejidonさんの"殊に好きな一編"とのことで読む楽しみが高まりました。
ぜひ読んでみたいと思います!

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