心中をテーマにした短篇集です。
心中という言葉の持つずしりとした重みから、なかなか手に取らずにいたしをんちゃん作品でしたが、いざ読み始めるとページをめくる手が止まりませんでした。
好きだったのは「遺言」。
おかしみが存分に散りばめられた前半からのめりこんでしまい、最後に一気に押し寄せる切なさにやられました。
こんなに愛しい気持ちがたくさん詰まった遺言状をもらったら、相手が死んでしまった後であろうと惚れ直してしまいます。
最後の数行を読んだとき、ふと夏目漱石『夢十夜』の「第一夜」の美しさを思い出し、また切なくなったのでした。
中には、ずしりとくる読後感のものもいくつかありました。
出口のない問いかけに囚われてしまいそうな。
「君は夜」「炎」「星くずドライブ」は引き込まれて読んだあとに、もやもやっと胸をよぎるものがあり、少し不安な気持ちが残りました。
しをんちゃんの描き出す作品の多彩さに改めて圧倒されました。
今まで敬遠していたのが嘘のように、本書に夢中になっていたのでした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
読みました。
- 感想投稿日 : 2013年12月28日
- 読了日 : 2013年12月27日
- 本棚登録日 : 2013年12月28日
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