天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年7月27日発売)
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本棚登録 : 5294
感想 : 402
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心中をテーマにした短篇集です。
心中という言葉の持つずしりとした重みから、なかなか手に取らずにいたしをんちゃん作品でしたが、いざ読み始めるとページをめくる手が止まりませんでした。

好きだったのは「遺言」。
おかしみが存分に散りばめられた前半からのめりこんでしまい、最後に一気に押し寄せる切なさにやられました。
こんなに愛しい気持ちがたくさん詰まった遺言状をもらったら、相手が死んでしまった後であろうと惚れ直してしまいます。
最後の数行を読んだとき、ふと夏目漱石『夢十夜』の「第一夜」の美しさを思い出し、また切なくなったのでした。

中には、ずしりとくる読後感のものもいくつかありました。
出口のない問いかけに囚われてしまいそうな。
「君は夜」「炎」「星くずドライブ」は引き込まれて読んだあとに、もやもやっと胸をよぎるものがあり、少し不安な気持ちが残りました。

しをんちゃんの描き出す作品の多彩さに改めて圧倒されました。
今まで敬遠していたのが嘘のように、本書に夢中になっていたのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読みました。
感想投稿日 : 2013年12月28日
読了日 : 2013年12月27日
本棚登録日 : 2013年12月28日

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