茗荷谷の猫

著者 :
  • 平凡社 (2008年9月6日発売)
3.56
  • (32)
  • (80)
  • (73)
  • (18)
  • (5)
本棚登録 : 426
感想 : 114
3

江戸時代から戦後まで、東京で暮らした市井の人々の身に起きた不思議な出来事を紡いだ連作短篇集です。
武士の身を捨て、変わり咲きの桜作りに精魂注いだ植木職人。
世の人々を幸福にするために、究極の黒焼きを生み出すことに没頭した男。
戦争の気配が立ち込める中、輝く目で映画監督の夢を語る青年。
そんな人々の物語がどこかで緩いつながりを持ちながら流れていきます。
私たちが生きている時代は、連綿と続く一人一人の人生の積み重ねなのだということを意識させる物語でした。

本作の中によく知られる文豪が登場しますが、各連作短篇はその文豪の作品を意識して書かれたのかも…と思いました。
醸し出されるぞっとした怖さ、気配だけを残して終わる物語…。
結末がはっきりと見えない分、自分の中で増幅される不気味さと不思議さが本作の味わいを深めているように感じるのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読みました。
感想投稿日 : 2014年11月22日
読了日 : 2014年11月15日
本棚登録日 : 2014年11月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする