開口閉口 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1979年12月27日発売)
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本棚登録 : 380
感想 : 12

軽妙洒脱。読んでて滋味を得る。自分が生まれた頃に書かれた文章から感じる当時の風俗など楽しみつつ。/小倉百人一首。「気ままに一句一句読んでは床に落していると、回想や想像がつぎからつぎへとわいてきて時間に果汁をみたしてもらうことができた。」p.150/西園寺公望。「私が好きなのは、当時の国定修身教科書に<<艱難汝ヲ玉ニス>>の言葉を入れさせるまいとした挿話である。(略)何も幼少のときから学校でそんな観念を叩きこんで、ためにヒネくれて貧寒な気質の国民をつくってしまう、そのことを憂えて撤回を進言したのだが」p.267/バンコクの金言。稼ぎの三分法。「1/3は水に流す。1/3は大地にもどす。1/3は敵にくれてやる。」p.283 酒、土に埋めて貯金、女房に渡すことなんだとか/バンコクの金言。「25歳までの女は自分を殺す。35歳までの女は自分と相手を殺す。35歳以後の女は相手だけを殺す。」p.288/当時の女子大生は、語末に、”サムシング”とつけて話したりしていたのだろうか。p.304とか。/映画「大いなる幻影」。ジャン・ギャバンとシュトロハイムの競演。計算し抜いた自然さで楽々と演じているのを見てみたい。/グレイ卿がルーズベルトをお忍びで迎えて、二人きりで一日バードウォッチングしたエピソード。「こころの渇きがテロリストのそれでなくなってしまわないことには、滴の音が耳に入らない。オッサンにならないと聞こえてこない音というのもおびただしくあるのだよ。p.416 三十五すぎても滴が耳に入らぬ身としては、まだテロリストの渇きなのだろうか、と自問しつつ、本をおく。ただ、年代ごとに読み返して感じ方の違う本というのはある。自分にとって読み返す強度に足る何冊か、ということになるだろうが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2013年1月27日
読了日 : 2013年2月2日
本棚登録日 : 2013年1月27日

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