10代後半から30を迎える手前までの10年余の間に読んだ文庫本を、少しずつ読み返すことに。スタートは筒井康隆。当時読んだきり、はなれてしまっていたので新鮮です。
ちょうど一年ほどまえ、NHKで「七瀬ふたたび」がドラマ化されたのを観ました。その時に、この「家族八景」から始まる‘七瀬三部作’のことを思い出し、もう一度読みたいなと思っていたのですが、古い本は全て、実家の納屋の中。最近の帰省で掘り起こして少し整理し、段ボール3箱分、現在の住まいに送り返して、再読リレーを開始…
と、すっかり前置きが長くなりました。本題の「家族八景」。人の考えを丸ごと読む超能力を持つ少女・七瀬が主人公。一所に長く居続けると、自分の特異な力を露呈する危険が大きくなると恐れる彼女は、職場を転々としても不思議に思われないという理由で、家政婦となっている。雇われた家庭内に渦巻く意識下の愛憎が、七瀬の‘第三の目’によってあぶりだされる。
これはこんなに恐ろしい話だったか?目に見えない人の心を覗くということだけでもかなりスリリング。さらに怖いのは、七瀬が自分を守るために力を駆使したときの結末。ほんの‘いたずら’的な仕掛けで、巻き込まれる人々の人生を大きく変貌させてしまう…怖い怖いと思いながら、もっと覗き見したいという好奇心で読み進め、8つの家庭を巡る禁断の旅を終えました。
自分の特殊な力を確実に強めながら、力を隠して生き延びるためのしたたかさ、余りにも醜い現実にのみこまれまいとする抗い、常人じゃないことで感じる孤独…いろんな‘意識’との闘いあるいは共存の道を求めていく七瀬。この先彼女はどんな人生を歩むんだろう?気になる。読み終わったときに、心に残る七瀬の存在感は絶大です。
- 感想投稿日 : 2009年10月28日
- 読了日 : 2009年10月29日
- 本棚登録日 : 2009年10月29日
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