白い城

  • 藤原書店 (2009年12月17日発売)
3.82
  • (8)
  • (17)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 266
感想 : 26
4

17世紀の地中海、イタリア人の「わたし」はオスマン・トルコの海軍の捕虜にされてイスタンブルに連行され、自分とうり二つの外見を持つ「師」と呼ばれる学者の奴隷となることから始まる奇妙な、というよりほとんど奇矯な分身もの。周囲を「愚か者」と呼んではばからない「師」は(その名に反して)「わたし」から西欧の科学や思想の深奥を吸収しようとし、「わたし」は当初は望郷の念にかられながら、後には師に対する優越感や共依存の中で相手に自分について書くことを使嗾し、そのうちに二人の自我は溶解し、次第に入れ替わってゆく。新兵器とともに皇帝の遠征に随行し、地元のキリスト教徒やイスラム教徒に犯した罪について片端から審問してゆく「師」の姿は、グロテスクで印象深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2015年1月17日
読了日 : 2015年1月17日
本棚登録日 : 2015年1月17日

みんなの感想をみる

ツイートする