流しのしたの骨 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1999年9月29日発売)
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「結局のところ、万物はみな流転する」
宮坂家の母の言葉通り、物事は時の流れにのって刻々と変わっていく。
宮坂家の家族もまた各々の状況の変化を迎えるけれど、流れに逆らうことなく流されていく様が心地よかった。

宮坂家は父母と四人の姉弟の六人家族。
一家全員が見事なまでにマイペース。各々が好きなことを好きなようにやり、互いに肯定し合う(少しはお小言も言うけれど)。それでいて何かあるとすぐにまとまる団結力も強固。

おっとりしていてちょっと頑固な長女・そよちゃん。
神経質で少々エキセントリックな次女・しま子ちゃん。
のんびりしている物語の主役、三女・こと子。
そしてそんな三姉妹から可愛がられている物静かでいつも冷静な弟・律。
姉弟というより、年の離れた友達のような仲の良さが羨ましい。姉のことも名前をちゃん付け呼びなんてちょっとびっくり。
家族の誕生日や年中行事など何やかやと一家全員が集まって賑やかに祝う。そこに他所の人が入る隙間はない。この宮坂家の居心地の良さは家族六人にしか分かり得ないものだろう。たとえ長女の旦那さんでも。旦那さんが宮坂家に対して躊躇する気持ちがよく分かる。

どこで何をしていようと自分を信じて待ってくれている家族が当たり前にいて、家族全員が帰る家がいつもある。
当たり前のようだけれど、そんな当たり前の居場所があることはなんて心強いことなのだろう。
外で少々嫌なことがあっても、言葉は悪いけれど”逃げ場”があって”味方”がいることはその人の強みになる。
そんなことをしみじみ思わせてくれる物語だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 江國香織
感想投稿日 : 2022年5月29日
読了日 : 2022年5月28日
本棚登録日 : 2022年5月28日

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