本所深川一体をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引の茂七親分。年は50過ぎで、裁縫の腕の立つおかみさんと慎ましやかな二人暮らし。
若くてにぎやかな糸吉と物静かな権三の二人の下っ引きをつれて、本所深川の人々の生活を日々温かく見守っている。
蕪、白魚、鰹、柿、鮭、桜など季節の初物を題材に、江戸で起こる難事件を茂七親分が解決してゆく連作短編集。
謎多き稲荷寿司屋台の親父の作る数々の料理が物語を彩る。稲荷寿司はもちろん蕪汁に白魚蒲鉾、鰹の刺し身、柿羊羹、小田巻き、蒸し蜆汁、桜餅などなど酒のつまみからスイーツまで何でもござい、でどれもこれも美味しそう。
しかも茂七親分が事件の謎に行き詰まると、さらっといい助言をしてくれるので、正体不明ではあっても茂七親分がこの親父を頼りにするのも納得である。
実はこの茂七親分の物語はシリーズになっているらしい。
『本所深川ふしぎ草紙』→『かまいたち』→『幻色江戸ごよみ』→『初ものがたり』→『堪忍箱』→『あやし〜怪〜』(茂七親分の後継者・政五郎親分登場)
この他、最近読んだ『きたきた捕物帖(二)』にもチラッと出てきたような覚えが…。
どちらにしても、どうやらうっかりシリーズのど真ん中から読んでしまったみたい。
しかも今回読んだ『初ものがたり』には未収録の3篇にイラスト多数を添えた完全版となる〈完本〉があるなんて!どうりで終わり方が中途半端だと思った。これはいずれ〈完本〉を読まなければ。折角だから順調にシリーズを追ってみようと思う。
なお、回向院とは墨田区両国に“本当に”あるお寺だそうで、これまたびっくり。
- 感想投稿日 : 2022年9月22日
- 読了日 : 2022年9月22日
- 本棚登録日 : 2022年9月17日
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