それからはス-プのことばかり考えて暮らした (中公文庫 よ 39-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (2009年9月25日発売)
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感想 : 806
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何かに夢中になれること、打ち込めることってとても素敵なことだ。

続編かと思いきや、姉妹編だという今作は『つむじ風食堂の夜』の舞台"月舟町"のお隣の町"桜川"が舞台。
相変わらず和やかな雰囲気の中、物語は進む。
オーリィ君、マダム、安藤さん、リツ君、あおいさん…吉田さんの作品に出てくる人達はいつもほのぼのとしていて穏やか。
サンドイッチの店〈トロワ〉で働くオーリィ君は、飲む人の笑顔を思い浮かべ心を込めてスープを作る。
簡単なようでそのさじ加減はとても難しい。

何かに行き詰まったり弱り果てたときは、とにかく温かいもので腹を充たすべし。
温かなスープを一さじ飲む。
いつの間にか冷たくなっていた胃袋も心もほわーっと温まる。
体や心の強ばりも解れて、それまで抱えていたストレスや疲れも何処かに吹き飛んでいったみたい。
頭を悩ませている問題は何一つ解決してはいないけれど、ひとまずそれは横に置いておいて、まずはスープを飲んで温まろうよ。
そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。
吉田さんからの温かなエールのお陰で、笑顔を取り戻せそうだ。

残るは「月舟町・三部作」の完結編。
今からとても楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 吉田篤弘
感想投稿日 : 2020年10月10日
読了日 : 2020年10月10日
本棚登録日 : 2020年10月6日

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