『名作文学に見る「家」』という本を読んでいる。 小説の舞台となる家を記述から想像して絵に描き起こすという内容だ。その中に『ユタと不思議な仲間たち』が紹介されていたので、興味をもった。
夜中の1時から読んで3時には読み終わってしまった。
都会から家庭の事情で田舎に転校してきた小六生の勇太(ユタ)は、友達がなかなかできない。村の爺さんに、じゃあ、座敷わらしとでも仲良くしたらいい、とアドバイスを受け、満月の夜に座敷わらしが出ると言う銀林荘という旅館にひとりで泊まる。
布団の中で眠気をこらえておきていたユタだが、次第にうとうと。夢か現かわからないまま、墨を流したように暗い部屋に白く浮き上がる脚を見た… 座敷わらし?
とっくの昔に忘れ去った子どもの頃のワクワク、ドキドキ感を、こうして小説で読むのは懐かしいというより新鮮だった。「ユタ」なんて単語が題名につくから口寄せ巫女が主人公なのかと思ったら、ただのニックネームだった。もしかしたら、座敷わらしを呼びだせる霊力と実際の「ユタ」を結びつけたのかもしれない。まあ、それはどうでもいい話。
座敷わらしは複数人でてくる。その中の中心人物(妖怪)がペドロだ。このキャラクターがいい。
えばったり、すねたり、やさしくしてみたり、いたずらしたり、はずかしがったり、といろんな表情を見せてくれる。今風に言えば、ちょっと毒を吐くゆるキャラっぽい。かわいい。いつも小便臭いおむつをしているのにタバコを吸う。
ペドロとユタの会話のやりとりを聞いてるだけで面白い。幼い兄弟が大人の真似をして演説をぶっているみたいだ。
ただ、かわいいだけでなく、座敷わらしは、むかし飢饉があった年に間引きされた幼子が起源だから母親の愛情を知らないとか、ちょっとせつない過去を背負っている。だから時々いじける。
大人目線でずっと読んでいるからこんな感想になってしまうが、子どもが読んだらどう感じるか、とても興味がある。設定は今から昭和30年代後半のようだ。でも今の子どもが読んでも面白くて新鮮に感じると思う。小学生時代に読んでみたかった。
さて、なかなか村のこどもと溶け込めなかったユタも、座敷わらしの不思議な能力によって、とうとう仲間として認めてもらうことができたわけだが、その方法は読んでからのお楽しみということで。
- 感想投稿日 : 2014年4月27日
- 読了日 : 2014年4月27日
- 本棚登録日 : 2014年4月27日
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