再読。
圧巻の一言に尽きる。
ファンタジックな暗喩の連続、ダイナミックさと繊細さが支え合うフラクタルな多重構造、シンプルがゆえに言語化に困難な生命の神秘性というテーマ、ファンタジーとSFと純文学の垣根を超えた融合。
小説でしか表せないことがぎゅうぎゅうに詰まっている。
元々好きな作家だったけれど、初見時はこんな作品を書くひとだったのかと脱帽した。
実際にメインとなる舞台はぬか床とそのへんによくいる成人女性の日常生活圏内だ。それと、とある沼地。まあ、地味である。この話、本当に壮大なのだが、生活感漂う舞台装置のおかげで徹頭徹尾地味さが漂う。そして、それゆえに紡がれていく壮大さに意味が出てくる。
ジェンダー要素が強い作品なのかと多分一度は予想するだろう。意識せざるを得ないエピソードが頻出する。けれどそれすら飛び越えて、梨木さん持ち前の「肉体と意識」への秀逸なバランス感覚でもっていつの間にやら適正なサイズへと縮小した自意識を持たされた読者は、知らないけれど懐かしい、そんな場所に着地する。
傑作。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年8月31日
- 読了日 : 2018年9月1日
- 本棚登録日 : 2018年8月31日
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