希望の国のエクソダス

著者 :
  • 文藝春秋 (2000年7月19日発売)
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感想 : 142
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序盤にパキスタンやタイについて書かれていたので、途上国を扱った小説かと思ってよんでみたが、期待とは違う内容だった。しかし、中身は面白いし考えさせられる部分もある。

日本社会が行き詰まっているのは、本の中でも語られているように「大人が利益と効率しか考えていない」からなのではないだろうか?自由主義社会では全員が共通のルールで行動し、その中で速く走ったもの(最も効率的にお金を稼ぐ能力のある人)だけが勝ち、残りの人は必然的に負ける。コミュニティはドンドン壊れているし、どうしたって人間疎外は発生する。

村上龍はその打開策を中学生(若い世代)に託し、その為には教育(教育制度や日本の法律)を変える必要があり、従来とは異なるシステム(地域通貨や環境に配慮した生活)が必要だと言いたいのかも知れない。

ちょっと暴力的な革命を臭わせたり、左よりの価値観をみせているが、基本的には自由主義の考え方を捨てたわけではなく、小説としても無理のある展開(中学生の考えた事業や計画が100発100中で成功するなど)もあるが、日本と世界とか、日本のシステムとか、資本主義の限界とか、いろいろ考えたくなる内容ではあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2012年12月13日
読了日 : 2012年12月13日
本棚登録日 : 2012年12月13日

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