筒井康隆自薦の短編集。こんなに胸のむかむかというか、むずがゆさを感じながら読んだ小説は久々。ストーリーはめちゃくちゃなんだけど、その違和感を超越したすごみが各作品からあふれている。全くあり得ないとは言い切れないのではと、はたと気づき恐ろしくなる。
最後の喫煙者なんて今のSNSにおけるバイアスかかった扇動や、匿名性をいいことに乱立する心無い中傷なんかを想起させる。
こぶ天才はまだまだマジョリティな学歴至上主義を揶揄しているし、最後のオチなんてのは学歴社会で量産される堅物たちの行く末を暗示してる気がして他人事ではない。
喪失の日なんてのは、劇画チックではあるけど昔自分も同じような不安と期待と葛藤してたなーなんて思いを馳せる。
襟を正して盲信的に信じているただ一つの世界なんてのは、ちょっと状況が変われば瓦解するよう頼りないものなんだ、想像力を働かして突拍子もない世界に浸ることも不透明な時代で起こりうることを受け入れる鍛錬になるのではと思う。そんなときに筒井康隆の作品は良い教材である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
一般小説
- 感想投稿日 : 2022年12月17日
- 読了日 : 2022年12月18日
- 本棚登録日 : 2022年4月23日
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