ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2006年12月7日発売)
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感想 : 117
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結構積読しましたが、読了。もう少し生々しくエロティックな小説かと想像してましたが、ミステリーや幻想的な要素もありの硬派な内容だったかな。

19世紀のエスタブリッシュの交流を垣間見れた。どうもシニカルで自国に対してアイロニーを言葉遊びで混沌としていく会話もなんかぽいなー興味深く読み進めてた。

ドリアングレイという人生が芸術なのだ。人とは隔てた神聖なもの、日常とは切り離された鑑賞させるべき対象として崇められている。そこに人から滲み出ざるを得ない苦悩や後悔、不正や罪悪、老いや不純さなんてものが一切感じられない、まさに究極。

本人はそんな自分を呪い、感覚に全てを委ねる。快楽主義こそが人生で肝要であるのだと。破滅や不埒な生活こそ人生なのだと。純粋無垢な青年のような若さは呪縛と言い捨てる。
事実破綻した生活、芸術への執着を歩んできているのに、世間か疎まれる一面はあるが自身の美しさが事態を好転させる。そこの矛盾に精神が侵されていく様は読み応え抜群。

最後は精神異常に陥っていて、自画像の呪いによって殺されたのか、実際に自殺したのか混沌としたクライマックス。

心情吐露する表現が多く、ストーリーが冗長な面もあるがそこがドリアングレイの変わりゆく様を克明に読者の脳裏に打ち付けてくる。どんどん冷淡になっていくドリアングレイ、それでも美しさに一変の曇りもないアンビバレントさ。ごちそうさまでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典文学
感想投稿日 : 2022年11月26日
読了日 : 2022年11月26日
本棚登録日 : 2022年11月10日

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