(P[に]2-1)私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル に 2-1)

著者 :
制作 : 戸川安宣 
  • ポプラ社 (2009年11月6日発売)
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本棚登録 : 445
感想 : 61
4

兄妹の可愛さ。登場人物がみんな生き生きしていてとても楽しい。
ばあやなんか「あいにくと人殺しがあって」と、人殺しより、それで兄妹を息子が迎えに出られないことを嘆くようなことを言ったり。
戸川さんの親愛の情溢れる解説もよかった。

○みどりの香炉
中学生の兄妹のかわいらしいこと! おじさまも素敵な人。
語り口と事件の解決のやさしさに、なるほど初出少年誌の“らしさ”を感じた。これは子どもに読ませてあげたい。
○黄色い花
植物学者の面目躍如といったところ。兄のオムレツにだけ胡椒を六倍にしてやる、だとか、悦子の知りたがりと愛嬌が。何を事件の解決のきっかけにするか、本格ものらしいトリックだと思う。
○灰色の手袋
これ好き。途中出てくる弟が、ちょっと反則気味では?という気がしないでもないけど、ミステリ的解決として一番のような。傷痍軍人が普通の人物として出てきているのに新鮮さを感じてしまった。きっと、当時、普通にいたんだろうなと。筆者の境遇からも、そうした人ともしかしたらリハビリ関係の病院で知り合う事もあったりしたんじゃなかろうか。横溝や乱歩の傷痍軍人のイメージが何か少し薄暗かったりするのに対して、こちらは障害があって大変ではあるにしろ、市井の人として普通に生きていく人、ただその特性がトリックに使用されてハメられそうになる、というのが、独特でとてもよかった。
○赤い痕
ばあやとその夫と、それぞれとの兄妹のやり取り。ふたりが、この夫婦と息子にみせた愛情がよかった。出世させてあげたり、目をつむったり。
○ただ一つの物語
日常の謎を解決しようとして、その裏にあった友人の死の真相を明らかにする。えっちゃん、ママになっても“らしさ”満点。下の子の分も上の子の幼稚園弁当と一緒に作って家で食べたり、子どもの前でも食事中に新聞を読んで、「元からそんな完璧な母じゃない」と言ってみたり。この、自然であっけらかんとして、明るい感じがとてもいい。作者ご本人は甥っ子姪っ子と若いころ一緒に暮らしていたそうだから、そこで相手をしながら見ていたのかな。子どもへの愛情があふれていて、作者の人となりがにじみ出ているんだなと思った。かわいらしい話で、よかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2020年8月25日
読了日 : 2020年8月25日
本棚登録日 : 2020年8月22日

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