Ⅰ.闘蛇編に続いてⅡ.王獣編…あっという間だった。寝る前に少しずつ読み進めようと思っていたはずが、もう少し、もう少しだけという夜が二日続いて、そのまま最後まで読み終えてしまった。
王獣編は、エリンが世話を任された王獣(翼の生えた獅子のような獣)のリランと心を通わせることに成功し、王獣のあるべき姿や、かつて王祖が作ったとされる王獣規範の隠された真実を解き明かしていく。
しかし物語は、人と獣が絆を深めていくという単純な内容ではなく、人と獣が本当の意味では分かり合えないという切ない距離感が描かれ、読者はエリン(獣を愛する娘)という媒体を通すことで、その哀しみをより痛切に感じるのではないかと思う。
そこに加えて、国の権力者たちの争いに巻き込まれ、政治的なドラマも描かれている。醜い人間の身勝手さに翻弄され、エリンは生き物の性に虚しさを感じる。
「人は、獣は、この世に満ちるあらゆる生き物は、ほかの生き物を信じることができない。」
「武力で、法で、戒律で、そして、音無し笛で、互いを縛り合ってようやく、わたしたちは安堵するのだ…」
でも結局エリンは行動する。
ここまで苦しんだからこそ、最後のシーンでは胸にぐっと来るものがあった。
アニメ「獣の奏者エリン」のOPになっているスキマスイッチの「雫」を聴くと泣きそうになる。
登場人物も魅力的。優しいジョウンおじさん。エリンの友だちのユーヤン良い娘。神速のイアル。真王の甥のダミヤとか名前からして絶対悪者。
色々と書いたが、本作品はシンプルで読みやすく、非常に完成された物語だと思う。
物語は本当はⅠ•Ⅱで完結だったようだが、追加されたⅢ•Ⅳ•外伝も待機済みなので、続けて読もうと思う。
- 感想投稿日 : 2022年4月13日
- 読了日 : 2022年4月11日
- 本棚登録日 : 2022年4月11日
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