又吉がまだ芥川賞作家でない頃、小説を発表していない、純粋に芸人の頃の本。
渋谷の無限大ホール(吉本若手の劇場)でフリーペーパーとして配っていたもの。
又吉が好きな本日について文庫3ページ程のエッセイが書かれているが、この頃から文学的素養が爆発していて、すごい。
また、古本や本そのものへの愛が濃く感じられ、本、文章に助けられている、又吉に必要不可欠なものであることがよくわかる。
当時、お笑いライブを見に行って、このフリーペーパーを、何の気なしに眺めたとしたら、内容の濃さと面白さに度肝を抜かれただろう。
紹介されている本は本当に又吉が好きなんだろうなというセレクト。
本の内容が直接紹介されているわけではなく、本の内容に二重写しになるような、又吉自身の体験や、想像が書かれていて、この書き方をする時点で、クリエイティブ。
そのエッセイはそのまま短編小説にできるよなというくらい、小説家としての素地ができていたことがわかるレベル。
巻末の対談で中村文則、芸人ではなく、小説家になろうとしなかったのですか?という問いが説得力を持つ。
■気になったフレーズ
「純文学っていうものをたくさん読んだ人っていうのは、自分の内面に自然と海みたいなものが出来上がるんです。で、それは作家になるとかお笑い芸人になるとか、もちろんそれ以外のいろんな職業の人達にとっても、非常に素晴らしいものなんですよ。つまりいろんな角度から物事を考えられるようになる。(中略)又吉くんはたくさんの本を読んだことで海みたいなものが出来上がっていて、又吉くんが元々持っている才能が表に出る際にその海を通過しているように思うんです。(中村文則)」
■紹介された本で読んでみたいもの
赤目四十八龍心中未遂 車谷長吉
サッカーという名の神様 近藤篤
エロ事師たち 野坂昭如
月の砂漠をさばさばと 北村薫
告白 町田康
香水 パトリックジュースキント
何もかも憂鬱な夜に 中村文則
逃亡くそたわけ 絲山秋子
四十日と四十夜のメルヘン 青木淳吾
宇多川心中 小林恭二
- 感想投稿日 : 2023年2月12日
- 読了日 : 2023年2月12日
- 本棚登録日 : 2023年2月12日
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