夫から逃げるため、山の別荘に家出した瑠璃子。
別荘の近くにはチェンバロを作る新田と、助手の薫が住んでいた。
別荘での穏やかな生活を送るうち、瑠璃子は次第に新田に惹かれていくのだが、新田の傍らには常に薫の姿があるのだった……
簡単に表現するなら、静かな逃避と再生の物語。
しかしそれだけではない空気感を醸し出す文章に圧倒され、話のテーマもあらすじも何の役にも立たなくなるのが小川洋子の作品。
新田と薫のあいだに漂う濃密な雰囲気はあまりにも美しく、閉ざされた様子はいっそ切なく、とても立ち入ることなどできそうにない。
胸いっぱいに林の、湖の静けさを吸い込んだような読後感が、いつまでも残り続ける。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月14日
- 読了日 : 2021年1月14日
- 本棚登録日 : 2021年1月14日
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