どこか似ていて、それでも相反する二人の少年。あさのあつこの得意?な線引きのできない人間関係が惜しみなく書き綴られている。
永見も柏木も人間として欠落した部分があるように描かれている。そのことに関して、柏木のほうが箍が外れてるんじゃないかと思っていたけれど、むしろ「自分は人とずれている」ことに対して重荷に感じている柏木は人間らしさがあった。あらすじにもある「おまえを失いたくない」という台詞はもしかすると自分を自分として留めたい気持ちから発言したのかなあ、とも。
ラストシーン、永見に柏木の声はどう届いたのか。タイトルに『福音』が使われていることからも、永見にとって柏木の叫びは、自分を留めるための救いになったのだと信じたい。
永見も柏木もどこか似た雰囲気の少年だ。性質に欠落のある少年同士。
決定的に堕ちてしまう危うさを持ちながらも、互いに互いを留め合う、唯一の関係なのだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年6月28日
- 読了日 : 2022年6月28日
- 本棚登録日 : 2022年6月28日
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