「さよなら、シリアルキラー」シリーズ三部作の完結編。ぶつ切りで終わった前作と違い、今作は最後まで手抜かりなくきっちりと描き切っている。果たして主人公のジャズは殺人を犯すのか?という命題の熱を冷まさずに最後まで引っ張りつつ、誰もが認める大団円にまで持って行ったのには驚嘆に値する。主人公以外に止められない、止めるためには殺すしか無いという難題に対して出した主人公の解答は素晴らしく、よもやすれば漫画的な解決ではあるが、主人公のシリアルキラー設定というスパイスのおかげで成り立った主人公らしい裏技的な解決であろう。非常に小説的でいいと思う。また主人公が罪を背負って生きたり、主人公が死んで終わるパターンにしなかったのは立派である。血脈や人種といった変更不可能な属性というテーマに対して真摯的に取り組んだ結果だろう。クライマックスやエピローグのまとめかたも上手く、少年少女が主役の青春ミステリにおいて、大人がしっかりと大人の役割を果たしたのにも好感が持てる。最後の母との対面や、いつでも殺せるけど人間的で要るためにあえて殺さないという、生殺与奪の権利を持ったまま終わるという締め方も印象深い。設定やキャラクター、シチュエーション、ストーリーテリング、どれも高水準な本作ではあるが、何よりもその風呂敷の畳み方に感動した一冊でした。これぞエンタメ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2019年5月28日
- 読了日 : 2016年6月5日
- 本棚登録日 : 2019年5月28日
みんなの感想をみる