記憶の神経心理学 (神経心理学コレクション)

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  • 医学書院 (2002年5月1日発売)
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感想 : 2
5

把持(はじ)、賦活(ふかつ)、色々な脳の部位の名称などの日常で触れない単語が多く読み進めるのに多少慣れが必要だったが、実際の症例に基づいて脳の構造と記憶の関係性について丁寧に説明がされていて勉強になった。
本書の概要は以下のようである。

第1章「記憶の現象学」では、記憶の大まかな分類について日常の経験に基づいた説明がされている。行動で表出される陳述できない記憶と陳述できる記憶、さらに陳述できる記憶は出来事についての記憶と意味についての記憶に分けられる。また、短期記憶が障害された場合でも長期記憶が機能している事例から、作業記憶(working memory)仮説にも触れている。

第2章から第4章では、記憶に関する症例から障害された機能について詳しく調べることで、記憶の構造を探っていく。
第2章では生活に関する記憶の障害、前向健忘や逆行健忘などその他さまざまな健忘について書かれている。
第3章では意味に関する記憶の障害、意味記憶が複数種類の感覚が組み合わさって構成されていること、意味記憶がカテゴリーで整理されることなどが書かれている。
第4章では手続きに関する記憶について、重度の健忘患者がパズルであるハノイの塔を解きその解き方も覚えている事例や、(無)条件反射と小脳の病変についてなどが書かれている。

第5章では脳の解剖学的な観点から生活記憶と脳の部位との関係性について、脳のネットワーク構造と記憶の関係性について書かれている。

第6章はこれまでの議論を根拠にして、記憶の素材と概念の発生について、記憶の登録と想起について、心理的な時間と記憶の関係性についてまとめている。

普段の生活にすぐに活用できるような内容の書籍ではないが、なにが事実でなにが意見なのかが明確に書かれていて好奇心が満たされる内容だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月5日
読了日 : 2023年3月5日
本棚登録日 : 2023年2月26日

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