★2016年3月12日読了『なごり歌』朱川湊人著 評価B+
朱川湊人らしい昭和テイストのミステリ連作。中でしっかりそれぞれの登場人物、お話がからみ合ってきます。昭和40-50年台の東京東部に出来た団地、虹ケ本団地がその舞台となり、そこに住む人達の人生、哀歓が描かれます。
中でも、『ゆうらり飛行機』という短編がいいですね。団地に住む定年を過ぎたらしい森沢さんという男性と団地に住むつい最近4歳の男の子を流行り風邪で失ってしまった杉下さんという30台男性の交流が温かい。そして、森沢さんの人生もまた、辛く厳しい。それを乗り越えて温かい人物という点が渋い。
また、ここに絡んでくる杉下さんの階下の時計職人の菊谷は、最終の短編では意外な展開で再登場し、思わぬ方向へ話が進み、前半に登場した女性の物語にオチをつける。
なかなか良く出来た短編連作とその展開でした。朱川氏の持ち味が十二分に出た良作だと思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本現代小説
- 感想投稿日 : 2016年3月13日
- 読了日 : 2016年3月12日
- 本棚登録日 : 2016年3月12日
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