海賊とよばれた男 下

著者 :
  • 講談社 (2012年7月12日発売)
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敗戦後、日本の石油エネルギーは、巨大石油資本「メジャー」に牛耳られ日系石油会社は次々とその傘下に入ることで生き延びる道を選択せざるを得なかった

そんな情勢の中、国岡商店はそれを断固拒否し、自らの力で、念願だった石油の輸入化に向かって、数々の妨害や中傷を克服し、一歩一歩前進していく様に何度となく胸が熱くなり、深い感動に包まれた

『日本人としての誇りと自信を持て』社員に向けて何度となく投げかけられた鐵造の言葉は、現代の日本人に対しても向けられている言葉ではないだろうか

国岡鐵造が店員5人からスタートした国岡商店
当時、石油を商品として扱うことは儲けに繋がらないとされていたにも関わらず、これから日本が世界と対等に渡り合っていく産業を起こすためには、石油なくしては成り立たないとの信念は、見事的中した

その先見の明にも驚く
日本は鐵造らの尽力により敗戦後わずか20年ほどで世界有数の国家となった
石油を扱った会社だけでなくこういった数々の先人の努力によって今の日本があるのだろうと思う

昭和44年83 歳となった鐵造が自分の人生を振り返るこんな一節があった

「日本のために生涯をかけて石油の供給に励み、戦後の日本の繁栄にも幾分かは貢献してきたという自負もある
しかし、石油は人々を本当に幸せにしたのだろうか。もしかしたら石油など手にしない方が幸せだったのではないだろうか」

まだ、この頃、地球環境破壊の問題は大きくなってはいなかっただろうに、いろいろ弊害が出てきていたのだろうか

自分が生涯をかけてきた事業にそんなことを思う鐵造の視野の広さや懐の深さに驚くとともに気の毒にもなった

上下巻とも感動の連続だった
何度となく鼻の奥がツーンと痛くなり目頭が熱くなった

表紙の写真も上・下の概要を象徴していて、意味深い

この本に出会えて本当に良かったと思った

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年12月8日
読了日 : 2020年12月8日
本棚登録日 : 2020年12月4日

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