風が強く吹いている

著者 :
  • 新潮社 (2006年9月21日発売)
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ブク友さんのレビューで、「あと少し、もう少し」「一瞬の風になれ」と並ぶ陸上三部作と知り、この本を手に取った
中学、高校、大学の陸上部つながりだそう 

新年の国民的行事の箱根駅伝は、我が家でも毎年欠かさず見ている。全国の長距離の精鋭がこの箱根路を走ることを夢見て、大学に入り鍛錬し、この日に臨む

竹青荘というオンボロアパートのたった10人だけで箱根駅伝をめざそうなんて、何と無謀で無茶な思いつきかと半ば呆れ気味に読んでいたが、これはもしかしたら、もしかするかも・・・と先が知りたくて、ページを捲る手が止まらなかった

こんなことは実際は、あるはずがないとは分かっていても夢中になり、沿道で旗を振り応援したり、テレビにかじりついて感動のもらい泣きする一観客になって、胸を熱くしながら読んでいた

個性豊かな10人のここに至るまでの経緯や心情も丁寧に描かれていて、10人それぞれの青年を好ましく思った

また、私にとってはただしんどいことでしかない『走る』ことを追求するハイジと走(かける)の姿は、今まで知らなかった世界を私に見せてくれた

大学の名誉をかけて1本の襷を繋いでいくことの重みは、テレビを見ていても十分感じるが、、この本では、母校の名誉や伝統というよりも、「走る」ことの楽しさや共に苦しい練習を乗り切ってきた友に襷を繋げていくことを中心に描いているので、より共感できる

※弱小部でも、素人でも、地力と情熱があれば走ることができる。だれかの言いなりにならなくても、二本の脚でどこまでも走っていける。俺は箱根駅伝でこのことを証明したいと思った

※10人だけで挑んだ戦いになんらかの形ではっきりとケリをつけたいからだ。意味とか無意味とかじゃない。自分たちがしてきたことの証しと誇りのために、今できる限りの走りを見せる

※俺はずっと忘れていた。忘れたふりをしてきた。こうして走ることの切なさと歓喜を。思い出させてくれたのは、再び味わえる場に導いてくれたのは、竹青荘の住人たちだ

物理的に同じ道を走っても、たどり着く場所はそれぞれ違う。どこかにある自分のためのゴール地点を探して走る姿は、この上もなく尊く美しかった

そして10人それぞれが何かを見つけたことが、走り終わった姿から伺え、読み終わった後もしみじみと温かいものが残った

いくつになっても、誰かが何かにひたむきに打ち込む姿というのは、感動するものだなと思ったし、感動できる自分が嬉しかった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月20日
読了日 : 2021年2月20日
本棚登録日 : 2021年2月17日

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