孤宿の人 下

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  • 新人物往来社 (2005年6月21日発売)
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ようやく丸海の町に平穏が戻ってきた

ほうの味方となり守ってくれた宇佐、渡部一馬、石野様
そして加賀様・・・多くの犠牲者を出して

結局、加賀殿は鬼でも悪霊でもなかった
次々と起こる奇怪な事件は、加賀殿が運んできたものではなく、恐怖・我執・欲・憎しみなど人間がもともと内に隠し持っていたものを加賀殿を口実に外へ出すことができるようになるからこそ起こったものであった

ほうの無垢さが大人たちがこぞって踏み迷っている闇を晴らしてくれるのではないかと期待され、加賀殿の元に送られた舷洲先生の思惑は、見事、的中

かけがえのない無垢なほうが加賀殿の冷たく固く凍りついた心を溶かしていく
毎日のご機嫌伺いの時間の加賀殿とほうのやりとりに心を打たれる
たどたどしいながらも懸命に加賀様のご機嫌を伺い、問われたことに答えようとするほうの姿が目に浮かぶようでいじらしい
真剣に加賀様の体調を気遣うほうの真心を加賀殿もしっかり受け止められる
加賀殿は、鬼でも悪霊でもない
ほうの心の美しさを見抜き、慈しみ、名前まで与えられる

遺品のようにして、ほうの元に届けられた手習のお手本と『宝』の字
阿呆のほうではない、かけがえのないほうの命そのものが宝であると・・・

感動で胸が熱くなった

将軍家斉の思惑をも巻き込んだ壮大な歴史小説であったが
その反面、人間誰しものの内側に住み着くドロドロしたものを題材にした心理小説のようでもあった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年10月25日
読了日 : 2021年10月25日
本棚登録日 : 2021年10月22日

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