前半に出てくるエピソードが全部金の話なのがおもしろい。最初は主人公ナッシュの行方不明だった父からの遺産の話、次に相棒ポッティのたまに来て散財する父との幼少期の思い出話し、最後にポーカーの相手となるフラワ&ストンの宝くじの話。どれも短編小説にしてほしいくらい楽しい。
ナッシュはなにかから逃げているような感じがします、ですので転がり込んできた遺産で買った新車の赤いサーブ900でアメリカ中を走りまくるのは逃避行の旅になるのだろう。ナッシュの住むボストン、娘の住むミネソタ、亡き父の住んでいたカリフォルニア、最後の舞台となるニューヨーク。実際の距離と小説の中の時間間隔がおかしいのは、ナッシュが何の目的もなく金が尽きるまで走りまくっているのを表している。
金が尽きそうになったころに出会うポッティ、なぜ彼を相棒にしたのだろう。
・ポーカーの達人と見込んだ、カモから金を巻き上げ残金を増やして旅を続けるため。
・ポッティから自分と同類のにおいがした、旅の仕上げを手伝ってもらうため。
理由はどちらもあるような気がします、どちらにしても旅の終わりはそんなに先ではないとわかっていたのでしょう。
ラストでハイドンとモーツァルトの逸話が出てきます。ナッシュは自分がハイドンとモーツァルトどちらに似ていると感じたのだろうか。ひと仕事終えた人間の選択がどうだったのか、そして謎めいたラストシーン。なかなか想像力を掻き立てられました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年5月10日
- 読了日 : 2023年5月10日
- 本棚登録日 : 2023年3月18日
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