遅ればせながら、柳広司さんもスパイ・ミステリーも初読みでした。2008年に刊行され、翌年吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞をW受賞! 賞に違わず流石に良質な作品で、グイグイ引き込まれ堪能できました。
時は1937年、第二次世界大戦が近づく帝国日本の時代。各国の諜報員が暗躍し、日本陸軍でも、結城中佐の発案でスパイ養成学校、通称〝D機関〟が開設されるところから始まります。
本作は、訓練を受けた優秀なD機関の学生が、結城中佐の指示のもとスパイとして暗躍する姿を描いた5篇の連作短編集です。
神田、横浜、ロンドン、上海、また東京で、D機関生の任務遂行が描かれるのですが、「スパイ=見えない存在」「経歴含め全て偽装」なので、当然のことながら個性が全く描かれません。
これは、D機関生を指導し束ねる結城中佐も同様、と云うか、最強の謎だらけの〝魔王〟です。読み手もどこまで信用できるのか、はたまた騙されているのか、端から手のひらで踊らされているのか、緊張感と共に、嵌められている感覚になります。
これらが想像を掻き立て、スパイのリアリティを高めている気がします。加えて、スパイという任務の特異さ、究極の自負心の塊のような末恐ろしさを感じずにはいられませんでした。
小説ならではのスパイの〝カッコよさ〟〝美学〟を描き切った、極上のエンタメ作品でした。シリーズ第四弾まであるようで、気になります。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月20日
- 読了日 : 2023年8月20日
- 本棚登録日 : 2023年8月20日
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コメント 5件
みんみんさんのコメント
2023/08/20
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/08/20
みんみんさんのコメント
2023/08/20
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/08/20
みんみんさんのコメント
2023/08/20