みずうみ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
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感想 : 233
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表紙が美しい。持っているだけで良い気持ちになる。
「いつでもおへそをあったかくして それは権利なんだよ。生きているうちに必ずできることなの。」ちひろの母は希望のある言葉を言っていたけれど、それは中島くんにも当てはまるのだろうか。この世に沢山いる、継ぎ接ぎ人間達にもその権利はあるのだろうか。

最後に中島くんが語った過去が、印象に残った。「誘拐されるって、どういうことかわかる?誘拐した人たちを好きにならなくちゃいけないんだよ。それがどういうことかわかる?」責めるような言葉が胸に刺さった。自分がこの世にいちゃいけない、その感覚は簡単に抜けるものじゃないだろう。悲しい過去ばかりが目立つけれど、中島くんやミノくんやチイは彼らなりに生きている 生活し続けているのだ。貫くものがなければ、ただの世捨て人になってしまう。ちゃんと大学に入って、頑張ってるのねってチイに言われて、恋人とパリへ行くのだ。私達はもう決まっている運命にはめられていて、奴隷のようにグルグル回るだけ…それでも生きていくしかないのだ。チイが歩いて、喋れるようになる日 そんな希望を夢見て、生きていく。

誰にでも悲しい過去がある。あっただけ。それだけ。
これからも生きていく。おへそをあったかくして。
それだけ。

もう一度読み直したい あまりにも重い きちんと向き合いたい。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年2月8日
本棚登録日 : 2018年2月8日

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