度肝を抜かれる。
鶴田錦史……全く知らなかった人物。
明治44年生まれのこの人は、昨年、生誕百周年を迎えたという。
亡くなって18年、私と重なる時代を生きていたのに、
どうして何も知らずに来てしまったのかと悔やむ。
男装の天才・琵琶師。
子を捨て、女を捨て、一時は琵琶も捨てながら、
実業家として成功し、美しい妻を得、
そして、音楽家として世界中に認められた。
常に、人生に対し、負けなかったこと、才覚を惜しまなかったことに
この成功はある。
ユーチューブで、武満徹作曲の出世作「ノヴェンバーステップス」を
かつての成功の立役者・小澤征爾指揮による演奏を観て聴いた。
難解な現代音楽界にあって、天才と呼ばれる彼の音楽は、私にとって耳なじんだ音楽とは違う。
でも、息を詰めて、目を凝らし、集中して見入ってしまう力がそこにはあった。
琵琶が打楽器であるとの認識を再確認した。
タイトルの「さわり」は琵琶独特の響きのこと。
日本人の感性は、わざと耳に「障る」ような、複雑な自然の音に近づけることでより美しさを感じ、琵琶はそれを最も重視しているのだとか。
タイトルの意味がようやく呑み込めた。
まだまだ知らないことばかり。
著者自身が自らの想いによって追い求めたのではなく、
出版社から頼まれて書き始めたテーマだからであろうか、
さらりと読めるノンフィクション。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
評伝
- 感想投稿日 : 2012年4月26日
- 読了日 : 2012年4月26日
- 本棚登録日 : 2012年4月26日
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