ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス 51)

  • 白水社 (1984年5月20日発売)
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「子供たちは走ってるときにどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっからか、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。(中略)ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。」
「誰にもなんにも話さないほうがいいぜ。話せば、話に出てきた連中が現に身辺にいないのが、物足りなくなって来るんだから。」

インチキばかりの大人の世界に絶望し、反抗を試みる思春期の少年の葛藤。どこか惨めで寂しくて、不安定な日々。

何をやってもうまくいかない。周りは見栄と欺瞞に生きるクソッタレばかり。そんな世界を醒めた目で見つつも、振り切ることのできない優しさや過去の思い出に葛藤し、揺れ動く。

今はまだ何も決まっていなくても、自分の向かう方向が確かではなかったとしても、その途中で新たな興味が湧いてくることだってある。もっと素敵なモノに出会えることだってある。

物事はいつも綺麗に単純に進むものじゃない。子供から大人に変化するなかで自分自身をもう一度見直すきっかけになったし、今の心境にも重なって泣いてしまった。

赤毛のアンのような爽やかな青春モノだと想像していたが、似て非なるテーマだったように思う。

学生の時期に読めてよかったと思える作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月7日
読了日 : 2022年4月7日
本棚登録日 : 2022年4月7日

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