アルプスの少女ハイジ (角川文庫)

  • KADOKAWA (2006年7月22日発売)
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本棚登録 : 197
感想 : 29
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今まで『ハイジ』というと牧歌的で優しいお話、と思っていたのだけど、それはアニメ版のハナシで、原作は意外なほど啓蒙的、宗教的な物語でした。小さな女の子が教養と信仰を身につけていくのと、持ち前の素直さや優しさで人の心を掴んで人生が開けていく、その過程を追っています。ずいぶんと「しっかりした」小説だったんだなぁと驚きました。 ◆でも別に「夢が壊された!!」ってわけではないし、アニメ版のファンにとってはむしろ嬉しい結末が
用意されています。 ◆私は小さい頃に母に薦められて、アニメ版をビデオで一通り観ました。その時に気になったのが一つ。
「おじいさんが亡くなったら、ハイジはどうなっちゃうんだろ」老人と子供だけの家庭には必ずついて回る問題だと思います。
 ◆原作ではおじいさんもそれを気にしていて、ハイジが学校に通いやすいように
アルプスの山の中から麓の村へ引っ越したります。(長年人付き合いを絶っていたから、これは一大決心)それから、クララの主治医がアルプスに移住する時には、自分の死後のハイジの後見をそのお医者さんにお願いしたり。 ◆一方でハイジには、クララの家で辛い日々を過ごす中で信仰心が芽生え始めます。これは、神様を信じなくなっていたおじいさんの元にいてはなかったかもしれない事。フランクフルトでは、クララと一緒に勉強して字も読めるようになりました。そして、アルプスに戻ってからは、信心深いペーターの祖母に賛美歌を読んで聞かせて、自分もそれを味わうようになるんです。 ◆もしもこの小説に続編があるなら、ハイジはきっと教養ある信心深い女性に成長しているだろうな。これは「教育」と「信仰」がどれだけ人の生きる力になるかを伝える物語。私は特に何かの信者ではないけど、なんか、読み終わったあと感慨深くなりました。

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感想投稿日 : 2007年2月23日
本棚登録日 : 2007年2月23日

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