「平成」の30年間に直木賞を受賞した作品を図書館にて展示してみよう、という企画に際して久しぶりに読み返しました。
主人公は伊良部総合病院の神経科で精神科医を務める伊良部一郎。でっぷりと太った体形と、子どものような言動で周囲を巻き込み、ふりまわします。患者は、伊良部医師の気ままな言動に右往左往しながらも、彼ら自身が抱える悩みを解決するきっかけを見つけたり、新たな希望を見つけたりする、という展開の短編集です。
まるで5歳児のように自分勝手な伊良部医師の講堂はユーモラスでほほえましいですし(実際にそばにいたら付き合うのは大変そうですが)、看護婦のマユミさんのキャラもしっかりとしていて読んでいてあきません。
それぞれの患者が抱える悩みの根っこにある「弱さ」は、多かれ少なかれ現代人が抱えているものだと思いますし、それを文字通り笑い飛ばすようにして解決してゆく伊良部医師のことばには、多くの人が救われるのではないでしょうか。
「町長選挙」「イン・ザ・プール」といったシリーズ作品もあり、あわせておすすめしたい1冊です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
仕事
- 感想投稿日 : 2019年4月22日
- 読了日 : 2019年4月22日
- 本棚登録日 : 2019年4月22日
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