地方に住む地味な女教師が出会い系サイトで
陰気で偏執的な性癖をもつ男性とセフレ関係になる。
彼の要求は徐々にエスカレートしていき、
ある日、行為を撮影させろと言い出す。
個人を規定する要素が多層化する社会で、
本名や職業、居住地といったデモグラフィックやソーシャルな属性が消失し、
さらには衣服や倫理観、性癖といった極パーソナルな属性までも剥ぎとられ、
その上、顔にモザイクをかけられた全裸写真や性交動画がネットで公開された時、
「個」として残るものは何か。
かなり生々しくエグい性描写が続くが、
本質は後の分人思想に連なる「本当の自分とは何か」にある。
このテーマ性を表現するために、
これら個を成立せしめる要件がひとつひとつ取り除かれ、
文字通りむき出しの「個」が晒されていくという、
全編を通じてかなり観念的な世界が提起されている。
なので、そこを読み違えると完全にただの官能小説。
筆力が半端ないので、エロスムードも満載。
物語性や人間の辛苦といった、
いわゆるイメージ通りの文学作品を期待して読むと
ずいぶんと違和感を感じる羽目になると思う。
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年6月12日
- 本棚登録日 : 2013年6月12日
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