”ウサギ狩りに行く人はウサギが欲しいわけではない”に始まる「退屈」の原理、メカニズムの壮大な考察。
主となり真理とも思える退屈に関する主張を早々に謳いつつこの分厚い書物がどう展開されていくのか不安がよぎったのだが、とっかかりの予感よりもはるかに奥深い議論にいざなわれる良書。
ただ、正直この議論に真っ向勝負で挑んで行くのはしんどい。
昔々の哲学者が提起した命題について、この視点が抜けているとか、別の切り口で深堀りされても、元々の命題に対する理解もままならないから、う〜ん確かにそうなのかもしれないけど、となんとなく勢いに押された感が残る。
それでもやはり全体として、”定住によってもたらされた退屈”という人類学から見た起源だったり、”貴族階級の暇の見せびらかせ”、”仕事人間と余暇”、”浪費と消費”といった経済発展・資本主義との複雑な関連、果ては”疎外”や”決断→(思考の)奴隷化”、”習慣”といった哲学的観念を取り入れた考察は本当に議論の幅が豊かでおもしろい。
結論だけ読むと抽象的なのだが、著者も言うように結論だけでは意味がなく、この議論を経て様々考えることが重要なのだと思う。
確かに、この消費は煽られているのか!?とか何となく満たされない感(自分のにも他人のにも)に敏感になった気がする。
読書状況:読み終わった
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教養
- 感想投稿日 : 2022年6月18日
- 読了日 : 2022年6月12日
- 本棚登録日 : 2022年6月18日
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