折口信夫対話集 安藤礼二編 (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (2013年6月11日発売)
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右系の団体が折口信夫の思想を持ち出して右翼的思想擁護していたので、そんなことが可能なのか著作を読み返したが、やはりちょっと無理があるぞ~ってことを確認。では折口氏の思想の起源にさかのぼって知りたい欲求に駆られこれに行きついた。
青春時代(この本のなかでは13歳ごろから25,6歳くらい)の早熟な思想の萌芽が生い立ちや環境にあるとしながらも、かなり論理的を欠く強引さを過去の折口研究と理解度をもって包み込むような結論付けだった。その論旨はさておき、ああ、こんな構造でも本になるんだとの感慨にふけった。
対談形式というのも、軽く話してみました、といった感をのこしているため、果たして著者が論旨を強く主張しているのかどうか疑問を持つが、先述のように、ああ、こんな風にも書けるのか、と・・・。
折口信夫の著作は好きだ。明治から大正、昭和の時代を感じさせず近代に居ながら古代の香りを漂わせるような歌も(作名は違いますがね)好きだ。
本書の中でも触れていたが、折口氏が日本的な美を文学、言語学や民俗学の中でつまびらかにしていたことは間違いないがそれは日本的な美を独立して賞賛していたのではなく、世界的な視野にたって、個々の美を認めたうえでの日本的な美であって、唯我独尊思想ではない。この点では本書の著者が論じる思想の萌芽期にあっても同様であった点では本書に納得させられた。よって右翼的な思想の擁護にはまったく当たらないことを確認した。引用するには都合のよい部分だけ引用してはいけません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : 2014年3月29日
本棚登録日 : 2014年3月29日

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