<三島屋変調百物語>シリーズ第二作。
久しぶりの再読だが、やはり表題作の「暗獣」は切なくて泣ける。
世の理から外れてしまった生き物と、その生き物と共に生きようと願う人々。共生しようとする思い自体は世の理に倣っているはずなのに、共生することは世の理から外れてしまう。何とも矛盾する話で、結局はそういう結末しかないよね…と分かっていながらもやはりなんとかならないものかと思ってしまう。
しかしこういう矛盾は世の中にいくらでもあるだろうし、結局はどちらかが消えてなくなるしかないというのなら、ここはやはり強い者が身を引くのが筋なのだろうと思う。とは言え、その逆が圧倒的に多いのが世の中だけど。
その他には「逃げ水」が何ともほっこりする話で、こちらも一歩間違えれば世の理から外れてしまって酷い結末になってしまいそうなところ、上手く収まる方法が見つかって良かったと思う。
そう言えば、この話から少年三人組+小僧の新太を加えた少年たちが登場したのだった。そして彼らの師匠である青野も登場だった。
このころのおちかは周囲に青野の存在のことを冷やかされ、読み手のこちらも何となく将来はそういうことになるのかなと思っていたのだった。結局は青野はおしまの言う通り『青びょうたん』だったということか。
またお勝が登場するのもこの作品からだった。最新作では最初からいるような雰囲気だったのですっかり忘れていた。
「藪から千本」「吼える仏」は何ともゾッとする話。
第一作ではおちかの心の内が空恐ろしいと書いてしまった私だが、第二作では子どもたち、青野、元偽坊主の登場もあってか、語られる話は別として全体的にはホノボノする雰囲気になっていた。
またおちかが少しでも変わりたいと望んでいる風にも見えて、その点でも少しホッとした。
- 感想投稿日 : 2019年1月4日
- 読了日 : 2019年1月4日
- 本棚登録日 : 2019年1月4日
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