日本辺境論 (新潮新書 336)

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  • 新潮社 (2009年11月16日発売)
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初版2009年。著者内田樹はこの本の要約を梅棹忠夫の「文明の生態史観」の次のような文章を引用して述べています。

「日本人にも自尊心はあるけれども、その反面、ある種の文化的劣等感がつねにつきまとっている。それは、現に保有している文化水準の客観的な評価とは無関係に、なんとなく国民全体の心理を支配している、一種のかげのようなものだ。ほんとうの文化は、どこかほかのところでつくられるものであって、自分のところのは、なんとなくおとっているという意識である。
おそらくこれは、はじめから自分自身を中心にしてひとつの文明を展開することのできた民族と、その一大文明の辺境諸民族のひとつとしてスタートした民族とのちがいであろうとおもう。」

そして結論として、

『日本文化というのはどこかに原点や祖型があるわけではなく、「日本文化とは何か」というエンドレスの問いのかたちでしか存在しません。』

と述べている。

日本人とはどんな民族なのか。人類の発生源はアフリカだから、地図上で言うと日本は遠い所の一つだし、アラスカ通ってアメリカ大陸に行ったのはさらに遠いような気がする。

地理的にみると日本は中華思想の辺境にいて元々貧しい国であったようだし、現在は地政学的にみると端にあって魅力に乏しく、アメリカと中国の2強に挟まれていて落ち着かない。しかし、2000年代に中国に国力を追い越された時、実は日本はお得なポジションに陥ったと考えた方が良い。法則として、1番と2番が競う形になるのだ。漁夫の利のような現在の状況が良く、3番以下位の方が余計な摩擦がない。

人生についての考察も無限に続くように、国家についての考察も無限に続くんだから、日本はよく考える人の国と言えるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年2月28日
読了日 : 2020年9月16日
本棚登録日 : 2020年9月16日

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