孤島の刑務所という雰囲気はよく出ていると思う。しかしストーリーが手荒でついて行けない。密室、人間消失、バラバラ殺人──これらの完成度が高ければ、ひとつのネタで長編を支えるのに充分なのだが、本作品はどうやらセット商品として売り出してあるらしい。よって、質より量を重視してあるような。密室が数多く出てくるが、そのトリックは応用を変えただけのワンパターン。苦し紛れや荒唐無稽なトリックも登場するので、やはり一歩引いてストーリー全体を読むことに意識を置いた方が気楽だし諦めもつく。上下巻合わせて相当なページ数だが、意図的に枚数を増やしたかのような無駄なシーンには閉口した。箇条書きが下手なのか、台詞にしても地の文にしても馬鹿丁寧な説明の応酬なので、自然と斜め読みに切り替わってしまう。キャラも書けてないし探偵の印象も薄っぺらなのだが、不思議と古典の残り香が漂い、それが妙に心地よかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
本格ミステリ
- 感想投稿日 : 2006年8月22日
- 読了日 : 2006年8月22日
- 本棚登録日 : 2006年8月22日
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