三つのパートから構成されている。人骨捜査とエーレンデュルの娘の災難は現在のお話。その合間に挟まれる、十数年前のとある家族のストーリーが、本作品の屋台骨をがっちりと支えている。人骨捜査もエーレンデュル・ファミリーの話も気にはなるが、とにもかくにも、この家族の歴史が凄まじく陰惨で、序盤は怒りを通り越して吐き気を催すほどだった。
“暴力”という表現は、それを経験したことのない人たちが使う言い回しだ──という台詞に思わず背筋が寒くなった。肉体的、精神的に破壊される様が淡々と繰り返し描かれている。目を背けたくなる心情に反比例するかの如く、なぜかページを繰る手は止まらず、気付けば一気に読み終えていた。強さと弱さ、惨さと慈悲、そして冷酷と優しさ、真逆の印象が秒刻みで、しかもそれぞれMAXで襲ってくるので、精神的にかなり翻弄されるが、読後感は悪くない。余韻は尾を引くが、一定のラインで折り合いをつけることで、沈静化するはず。
ミステリ度は低めたが、鋭角に食い込んでくる辺りに、シリーズとしての確実な成熟を実感した。やっぱり柳沢さんの訳だと安心するのかしら。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2013年8月4日
- 読了日 : 2013年8月4日
- 本棚登録日 : 2013年8月4日
みんなの感想をみる