ボリス・ヴィアン全集〈1〉アンダンの騒乱

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『アンダンの騒乱』といふ作品はボリス・ヴィアンの処女小説であります。1947年に執筆されてをりますが、発表は死後の1966年となってゐます。
姉妹編たる『ヴェルコカンとプランクトン』は早々に世に問ふてゐるので、何らかの理由で発表を見合はせたのでせう。解説の伊東守男氏は、アルフレッド・ジャリの影響が濃く出過ぎてゐるのを嫌つたのではないかと推測してゐます。さういふもんかね。

処女作といつても、既にヴィアン世界は完成してをり、キイワードの「すり切れ」も登場してゐます。読み始めはセラフィ―ニョなる男が主人公なのかな、と思ひましたが、結局謎のバルバランを求めて暗躍するのは『ヴェルコカンとプランクトン』にも登場する、少佐(マジョール)とアンティオッシュ・タンブルタンブルのコンビであります。少佐は実在の人物ですが、小説に負けない奇行の人らしい。しかしここでは、ヴィアン自身が投影されてゐます。

本作の中盤から、探索の途中で発見した「原稿」なるものが登場し、親子二代にわたる抗争であつた事がわかります。いや、訳知り顔で「わかります」と言ひましたが、良く分かりません。難解な小説だなあ。
結局最後はバルバランを手に入れるのですが、それによつて何を為すかといふ視点は皆無なのであります。

本書で有難いのは、巻末に収録された訳者による「評伝」であります。堂々50頁の「作品」と申せませう。これを読めばヴィアン入門者も彼の概観をつかめることでせう。

http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-787.html

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の作家
感想投稿日 : 2019年4月2日
読了日 : 2019年4月2日
本棚登録日 : 2019年4月2日

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