大恐慌時代の諸相に触れつつ、全盛期を疾うに過ぎ、ドン底を身を持って経験した1人のボクサーがブランクを経て王者に上り詰めるまでのプロセスを、時にユーモラスに、時にライトに、時にダークに丁寧なタッチで描いた実話ベースのサクセスムービー。
ボクサーとしての意地を捨て、更には男として、1人の人間としてのプライドをかなぐり捨て、家族や自身の生活を守りぬこうと奮闘する主人公の本来的な意味での「人間らしさ」と、見栄を捨てありのままの姿から発する根源的な意味での「バイタリティ」が凄まじい。
ただ如何せん、プロットが単純過ぎやしないか、後半の展開が些かご都合主義的ではないか、主人公をヒロイックに描き過ぎではないか、幾ら何でも綺麗事過ぎやしないか等々、ベースが実話であるにせよ、映画として難癖を付けるとすれば問題が山積みではあるが、皆が思い描く見事なヒーロー像を体現し、カリスマ性とユーモアセンスを併せ持つキャラを独自のイマジネーションと役作りで造り上げたラッセル・クロウの実在的存在感に魅了される。
それは当然ながら、オーソドックスな演出で堅実な物語を紡いだロン・ハワード、演者それぞれの持ち味を存分に引き出したロン・ハワード・・・。彼自身の演技力はもとより、そんな偉大な監督の冴え渡る手腕の賜物なのは言うまでもない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
洋画
- 感想投稿日 : 2012年2月5日
- 読了日 : 2012年2月2日
- 本棚登録日 : 2012年2月2日
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